ギガスターのルーツに迫る 第5回

★ギガスターのルーツに迫る   ・・・ 蘇る星空への情熱 LEDプラネタリウム in 1979 ・・・
(長文!拡張版)
5.困難があればあるほど、その道のりは美しい…
その日の朝早く、私は父とともに雨に打たれながら、トラックの荷台で使う厚地の布でできた幌(ほろ)を、ドームの上にかぶせていました。
直撃コースは避けれたものの、台風による激しい雨と風は、ドームに大きな被害をもたらすことが予想されました。台風12号は、1979年9月4日の午後に愛知県にもっとも接近するという予報。自動車修理業を営む父に相談して、風が強まる前に現場を訪れて視察しました。たしか学校は休校だったようい思います。 すでに風は強まってきていて、そんななか、信じられないことが目の前で起こりました。 ひとふきの風で、5メートルのドームが数センチ浮き上がって1メートルほどずれて止まったのです。 あわてて手で押さえても全くだめで、ホバークラフトのようにドームが動いた後、着地した端が地面と当たって大きくひずみ、壁面の新聞紙が一部よじれて破れてしまいました。
「やすくん、これじゃだめだ。地面に置いてあるだけじゃ風で巻き上げられるぞ。すぐにシートをかぶせて地面に固定しなくてはあかん。」
父はそう言って、いったん会社に戻ってトラック用のシートと鉄の棒を持ってきてくれました。すでに空からは雨が落ちてきています。トラックの幌は、厚地なので結構重いのです。その重さでドームを抑え込んでさらにロープで固定することで、地面との間に隙間を作らずに、風が巻き込むことを防ぐという対応策でした。 風の勢いでドームが持つかどうかは、風の強さとこのドームの強度次第だろう。 と言いながら、父は私と一緒にドームに幌をかぶせて、地面に打ち込んだ鉄棒にしっかりとロープを固定してくれました。

父は自動車修理業をゼロから起して、技術一筋で私たちを育ててくれました。 私はお風呂の中で、エアコンや冷蔵庫の原理、自動車のエンジンの仕組み、ゼロ戦の軽量化の秘訣などの技術の話を良くしてくれました。 私が理科や技術に興味を持ったのも、こうした体験が元だったと思います。 80歳を超える今では、自動車の下にもぐることはなくなった父ですが、今でも、枚一現場に出向いては車の修理に取り組んでいます。
父にとって高校2年生の私たちはどのように映っていたのでしょう。 子どもに任せて、口出しをせずに見守ってくれていたのでしょう。 でも、子どもたちでは何ともならない時に、父はしっかりと支えてくれました。 私は、洗いざらしの上下のつなぎを着て、雨に濡れながら一緒に台風の対応をしてくれた父の姿を、今でも心の奥に大切にしています。

翌日、学校へ駆けつけて中庭に行くと、ドームの姿はそこにありました。 強い風に、ドームは耐えてくれたのです。これは、竹と段ボールを無数の麻ひもで固定した強さからこそだったのでしょう。 でも、「良かった!」と胸をなでおろしたのもつかの間、中に入って懐中電灯を灯した私は、愕然としました。 あらゆるところから雨が漏れて、裾の部分などは下から水を吸い上げて、段ボールがぶよぶよになって、剥がれているところもありました。
このプラネタリウムは、麻ひもで縛りつけられているとはいえ、しょせん段ボール、「紙」でできています。雨に濡れてはひとたまりもありません。
駆けつけた仲間に、えらいことになった、親父が対応してくれてぶっ壊れなくて済んだけど、雨でやられた、これではもう完成できない、どうしようと、泣き言を言いました。 すると、仲間は口をそろえて、骨組みは壊れていないのだから大丈夫だ、段ボールはまだあるから修理すれば良い、新聞紙ははがして貼りなおせばよい、まだ時間はある、みんなでやれば間に合うと言って、さっそく修理の段取りをはじめました。
人間は切羽詰まった時に、悪い方向へと思考が向くものです。半分やけになりかけた自分を、仲間はあくまでも冷静に勇気付けてくれました。
それから気を取り直して修理を進めましたが、この影響で当初の美しい半球状のドームの形は若干歪んでしまいました。 またいつ台風が来るかもしれないということで、ドームに掛けた幌はそのままにすることにしたので、外から見るともうそれはみすぼらしい姿になってしまいました。

大きな困難を乗り越えて、私たちはいよいよ、LED星を壁面に貼り付ける作業に取り掛かりました。 まずは貼り付ける位置をプロットするために、「赤道儀」と言う望遠鏡を載せる台をドームの中心に設置し、望遠鏡の代わりに懐中電灯を改造したポインターを取り付け、ドームの壁面に、経度と緯度を引いていきます。 そして、星図とにらめっこしながら、星の位置を描いていきました。オリオン座など、有名な星座は少しでも形がずれると目立つので、慎重に、何度も書き直しました。 星の位置をプロットした後、事前に準備した「シリーズ」を壁面に貼り付けて行きます。 星をボンドで壁面に接着し、配線を壁面に白いラベルで固定していきます。シリーズの端には、電源から給電線を配線します。天井に半田付けをする際には、溶けた半田が振ってくることもあって、注意が必要です。後輩はズボンを一本パーにしてしまいました。
半田高校の柊彩は、最近は、受験勉強を優先することから、9月の新学期が始まってすぐの土日に開催されますが、当時は、敬老の日を中心に開催されていましたので準備の期間は余裕がありました。それでも、台風被害による手戻りがあった関係で、だんだん時間が足りなくなってきました。
作業に遅れが出てくると、日が暮れた後も先生が付き合ってくれました。 そうして、作業は急ピッチで進められました。

そして、とうとうすべてのLED星の貼り付けが完了し、それぞれのシリーズの点灯確認が終了して、暗幕で暗くしたドームの中で初めて全てのLED星を点灯する試験点灯の日がやってきました。
仲間が全員集まってドームの中に入り、入り口の暗幕をしっかり締めて遮光をして、心を落ち着かせて、LED星の電源を入れました。

1979年9月4日。プラネタリウムに被害をもたらせた台風12号の進路図 (気象庁のHPから引用)

1979年9月4日。プラネタリウムに被害をもたらせた台風12号の進路図
(気象庁のHPから引用)

 

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